From:橋本公平 (河内長野の茶店より)
おはようござます、ウェブマーケティングコンサルタントの橋本です。
ネットショップをしたいけど、独自ショップを開くか、楽天をはじめとするショッピングモールに出店するか迷われる方が多いようです。
知り合いの何人かが楽天をやっていて、その影響で何も考えずに楽天を選んだり、気に入ったネットショップが独自ショップだからと、それが前提に話をすすめるなど、それぞれ良い点・悪い点を検討せずにオープンする人がけっこういます。
ネットショップを開く際に、この独自ショップかショッピングモールかの判断はのちのち影響してきます。商材やターゲットはそれぞれなので一概に判断できませんが、結論から先に言うと、
多くの場合、独自ショップをおすすめしています。
それぞれのメリットとデメリットは何でしょうか?比較ポイントはたくさんありますが、ぼくが重要視する点で説明していきます。比較はショッピングモールを代表して、楽天さんに登場いただきます。
顧客との関係性構築
通信販売を会社の重要な事業としてとらえる人にとって、長期的に見ると重要ポイントです。
楽天の場合、たとえお客さんになってくれても、顧客情報は自店のものでなく楽天のものです。楽天という企業のお客さんってことになります。これが意味するのは、商売でもっとも大切な顧客リストが、じぶんの資産にならないことです。
つまりお客さんとの関係性を築きにくくなります。もちろんメルマガによるコンタクトは取れますが、直接DMでの案内や外部サイトへの誘導などができません。
楽天をやめて独自ショップをやろうと思っても、その顧客リストはすべて没収されるので、一から顧客を集める必要があるのですね。楽天は顧客の重要さを分かっているので、顧客リストは手放すことはありません。だから楽天をやめたくてもやめれない、鵜飼いの鵜状態になります。
独自ショップなら顧客情報はすべて自店のものなので、メール、DMはもちろん、新規店の紹介も継続的に行えます。
顧客との関係性構築
- 独自ショップ:◯
- ショッピングモール:✕
集客力
集客力ついては、圧倒的に楽天が優位です。
独自ショップは街中の独立店舗なので、自力で集客しないといけません。新規立ち上げ時は、この集客がいちばんたいへんです。SEOやリスティング、SNSなどを駆使してお店を知ってもらう施策をつづけないといけません。ただ、それだけ集客ノウハウが得られます。
一方、楽天だと独自に集客しなくてもショッピングモールにお客さんが来れば、入店してもらいやすくなります。楽天の2014年の訪問者数は8627万4516人です。1日に平均23万6356人が訪問してる計算です。もちろん、すべての店舗に均等来店するわけではないですが、ものすごい人数です。
ちなみにAmazonは1位で8677万8744人。Yahoo! ショッピングは6915万9037人です。※すべて(株)ヴァリューズ調べ
ただモールの中でもライバル店がゴマンといるので、その中での集客が課題になってきます。そこで楽天アドバイザーから勧められるのが、モール内での広告です。
「広告を出さないと目立たないので、お客さんが来てくれませんよ」と勧められ、広告を出して売上げはあがるけど、広告費がかさんで粗利が低くなる。そんな問題が生じるショップがたくさんいます。
楽天側の収益の多くは広告なので、とにかく広告をすすめられます。結局、独自ショップのリスティング広告と同じことを楽天内で行うことになります。事実、楽天内の約80%のショップは赤字と言われています。
楽天の1日の訪問者数23万6356人は圧倒的な多さと思いがちですが、実は1店舗あたりで見るとビックリするほど少ないです。2015.12.1現在の店舗数は、41,483店舗。訪問者数を割ると、1店舗あたり1日5.7人になります。少な!
80:20の法則で考えると、上位20%の店舗が80%のお客さんをごっそり奪ってることになります。
ただそれでもやはり、楽天のアクセスは凄まじく、大量の訪問者を獲得できる場にいる点では魅力的です。楽天をはじめとするショッピングモールの良さは、この点につきます。
集客力
- 独自ショップ:✕
- ショッピングモール:◯
(※当たり前ですが運用・施策によって変わりますよ)
顧客の質
楽天も独自ショップも、商品によってはこの問題にぶつかります。どこにでもある商品ばかりだと、当然価格の安いショップが選ばれる傾向にあります。
楽天の場合はそれが顕著。楽天内の検索結果で価格の比較がカンタンにできてしまうので、安いショップ、ポイントの多いショップに流れてしまいます。安い商品を見つけるなら楽天というイメージができてしまっているため、必然的に安さを求めるお客さんばかりになります。そうなると値下げしないと売れなくなり、他店も対抗するため価格競争になります。
他の店よりも1円でも安く値下げしたり、お客さんにレビュー獲得のために送料無料にしたり、粗品をプレゼントしたり・・・。物販だとただでさえ利益率が低い中で、月額利用料も重なって、さらに利益が少なくなるような販売を強いられてしまうんです。
独自ショップの場合は、ショップ内に入ってくれれば、とりあえずはライバル店との比較ができないので、施策しだいで価格以外の要素を判断材料になることもできます。次項のブランディングがその貢献を果たしてくれます。もちろん独自ショップも安さだけを売りにしていると、楽天と同じ末路をたどります。
モールにせよ独自ショップにせよ、どこでも売ってる商品だとショップの未来はありません。エッジの効いた商品やニッチに向かうなどして、個性を出していく必要がありますね。
顧客の質
- 独自ショップ:△
- ショッピングモール:△
(※当たり前ですが戦略・施策によって変わりますよ)
ブランディングのしやすさ
ブランドと言うとあいまいな言葉で分かりにくいですが、「商品やサービスを通して、お客さんの心に残るもの」と考えると分かりやすいです。これは楽天より独自ショップのほうが行いやすいです。
楽天で何かを買った後、あなたはそのショップの名前を覚えていますか?ほとんどの人が「(ショップ名でなく)楽天で買った」となるはずです。いちいちショップ名なんて覚えていませんよね。つまり、お客さんの心にショップの印象が残らないことになります。そうすると、リピート獲得がむずかしくなります。
独自ショップの場合、お客さんは「楽天内のお店で買った」ではなく「あなたのお店で買った」と認識しやすいです。お客さんの心に残りやすいので、関係性を維持でき、リピートや単価アップ、アップセルにつながります。
デザイン的な面で言うと、楽天はルールがあって自由なデザインやレイアウトができません。どのショップも同じような印象になりがちです。独自ショップだと、自由度の高い機能があるので、お客さんに与える印象で差別化できます。
ブランディングのしやすさ
- 独自ショップ:◯
- ショッピングモール:✕
維持費・制作費
楽天のほうが分が悪いです。出店料はもちろん月額利用料や売上げに対するロイヤリティなど、独自ショップに比べると毎月の出費は大きくなります。そこにモール内の広告費が加われば、さらに出費はかさみます。粗利益の低い商品だとやってはいけないでしょう。
ぼくの知ってるお店は粗利15%の商品を売っていますが、ほとんど儲けがないようです。(低粗利は独自ショップでもキツイ。体力ない会社はやっちゃダメです)
独自ショップは、ASP(カートシステムのレンタル)型だとドメイン、サーバー、SSLがパッケージされているので、出費はかなり抑えられます。サーバーインストール(カートシステムを自分で導入)型でも、ランニングコストはそれほど気になりません。
初期制作費については、楽天のほうがリーズナブルな印象でしょうか。レイアウトや機能の制限が強いため、似たようなデザインしかできない点で、コストが抑えられるといったイメージです。ASPでの独自ショップも機能制限がありますが、デザインの自由度は高いので、その分いろいろ作れちゃいます。
独自ショップもたくさんのテンプレートが用意されており、初期コストを抑えたいニーズにも対応してくれるので、選択によっては独自ショップだから制作費が高くなるとは言いにくいです。
維持費
- 独自ショップ:◯
- ショッピングモール:✕
制作費
- 独自ショップ:△
- ショッピングモール:△
ショッピングモールを活用するなら・・・
独自ショップ | 楽天 | |
---|---|---|
顧客との関係性構築 | ◯ | ✕ |
集客力 | ✕ | ◯ |
顧客の質 | △ | △ |
ブランディング | ◯ | ✕ |
維持費 | ◯ | ✕ |
制作費 | △ | △ |
以上の他にも比較ポイントはいろいろあると思いますが、ぼくが重要視する点に限って説明をしました。
冒頭に「独自ショップをすすめる」と結論づけたので、それありきの説明になってしまいましたが、ショッピングモールが絶対ダメなわけではないですし、独自ショップばんざーい!なわけでもありません。
ショッピングモールの良さは圧倒的な集客力につきます。価値ある商品の充実、成約・リピートの仕組みをしっかり行えば、その集客力は売上げに大きく直結します。
強いて言うと、多店舗展開で販路拡大を考えているなら、ショッピングモールは活用価値が大いにあります。ただ気をつけないといけないのは、「独自ショップ→ショッピングモール」の順番ですべきです。なぜだか分かりますか?
その理由は次回に説明しますね。